こんにちは、まるしかです。
35年ぶりの回顧展。
偉大なイギリス風景画家ターナーの影に隠れがちなコンスタブルに、スポットライトが当たりました。
目玉はなんといっても、横2m越えの大作『ウォータールー橋の開通式』でしょう!
この作品、デカイだけじゃなく圧倒されます。
ジョン・コンスタブル『ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日』1832年 テート美術館(イギリス)蔵 wikipediaより
正直webではこの絵のすごさは実感できません。木々や水面のきらめきが、大画面じゃないと見にくいのです。
コンスタブルは印象派に先立って、一瞬一瞬のまばゆい光の移ろいを表現した人です。そのため素早く作品制作。
その証拠に、作品には日付に加えて、何時から何時までに描いたと記録しています。この面白い話はまた後ほど。
ターナーとはライバル同士だったことはご存知でしょうか。上の絵は1832年当時、ロイヤル・アカデミーでターナーの絵と隣同士で展示されました。
本展ではその再現をしました。コンスタブル V.S. ターナーを鑑賞できる面白い試みです。当時の客になったつもりで2枚の絵を見比べると楽しめます。
全85点のボリューム。
ロンドン・ナショナル・ギャラリーの分館的な存在のテート美術館から、貴重なコレクションがやってきます。
風景画好きなら必ず楽しめるコンスタブル展の感想を書いていきます。
展覧会概要・アクセス
会期:2021年2月20日(土)~5月30日(日)
開館時間:10:00〜18:00
※入館は閉館の30分前まで
※緊急事態宣言発令中(3月中)は夜間開館を中止とさせていただきます。
詳しくはこちらをご覧ください。
休館日:月曜日
※但し、祝日・振替休日の場合、会期最終週と2月22日、3月29日、4月26日は開館
※新型コロナウイルス感染症予防の観点から、会話をお楽しみいただく企画の「トークフリーデー」は中止とさせていただきます。上記の日程は予定通り開館いたします。
出典:https://mimt.jp/constable/outline.html
JR「東京」駅(丸の内南口)徒歩5分
JR「有楽町」駅(国際フォーラム口)徒歩6分
都営三田線「日比谷」駅(B7出口)徒歩3分
東京メトロ千代田線「二重橋前」駅(1番出口)徒歩3分
東京メトロ有楽町線「有楽町」駅(D3/D5出口)徒歩6分
東京メトロ丸ノ内線「東京」駅(地下道直結)徒歩6分
チケット情報
新型コロナウィルス感染拡大防止のため、各時間の入場人数に上限を設けています。
一般:1,900円 高校・大学生:1,000円 小・中学生:無料
※本展覧会での前売り券の販売はございません。
※障がい者手帳をお持ちの方は半額、付添の方1名まで無料。
事前に日時指定券をご購入Webketのみの販売
優先的にご案内いたします。販売開始日は順次当館WEBサイトでお知らせいたします。
当日にチケットをご購入
学生割引、障碍者手帳割引、MSS会員のご同伴者割引の方は、当館のチケット窓口のみでの販売となります。
日時指定券をお持ちでない方
鑑賞券、MSS会員カード、中学生以下のお子様
毎時先着順のご案内となります。人数が上限に達した場合は、次の時間帯をご案内となります。
出典:https://mimt.jp/constable/ticket.html
わたしはwebketからチケットをネット購入しました。
日時は指定されますが、待たされず確実に入れます。
混雑具合
平日の開館10時に行ったせいか人はまばら。
会場はそこまで広くないのですが、人も多くないのでゆったり見れます。
会期の終わり頃や大型連休は混みそうです。お早めに。
撮影スポット
作られた撮影スポットはありません。
が、美術館自体が趣のあるレンガ造りで映えます。
館内は撮影NGです。
展示の最後の方に一枚だけ写真が撮れる絵があります。
ジョン・コンスタブル『虹が立つハムステッド・ヒース』1836年 テート美術館(イギリス)蔵 会場にて撮影
感想
後期作品が面白い
展示ではもちろんコンスタブルの生涯を交えて絵画の解説をしてくれます。
しかし、まずはテート美術館の壮大な風景画コレクションを堪能しましょう。
コンスタブルは初期〜中期までは自然に忠実な画風です。
ジョン・コンスタブル『フラッドフォードの製粉所』1816-17年 テート美術館(イギリス)蔵 図録を撮影
素朴であり、生真面目であり・・・人によっては後期のドラマティックな作風がいいと思うかもしれません。
ジョン・コンスタブル『ヴァリー・ファーム』1835年 テート美術館(イギリス)蔵 図録を撮影
後期の作品『ヴァリー・ファーム』。中央に見える家も脚色しているそうです。
想像が混じっているだけじゃなく、コンスタブル後期の作品は非凡な雰囲気が漂います。
先ほど登場した『虹が立つハムステッド・ヒース』のように、虹が頻出するのも後期の特徴ですね。
それこそ新海誠作品ばりに虹が出てきます。
中央の風車は実在しません。初期の徹底した写実主義からしたら、かなりの変わり身です。
中期と後期を分ける区切りは1828年、妻マライアの死。
それまでの順風満帆な人生から一転、友人の死、自身の病気も続き、精神的に不安定になります。心境は作品に表れてしまってますね。
それでも、1837年に死去するまでの9年間がなければ、コンスタブルの名声はここまで高くなかったんじゃないかな?と思います。
後期作品にはっきり現れたハイライト表現は、後の印象派へ影響を与えました。
そのへんを次に紹介しましょう。
コンスタブルのハイライト
コンスタブル作品には、ペインティングナイフを使った跡が残ってます。絵描きは素人のわたしでもわかるくらい。
当時流行り始めた、アトリエじゃなく戸外で描くスタイルは、とにかく素早く描かないといけません。
コンスタブルが水彩画を好んだのも速く描けるためです。
ただ、油絵の方がやはり売れます。油絵の硬い絵の具を効率よく塗りつけるには、ナイフが楽なんですよね。
で、白い絵の具をピンポイントで塗って、葉っぱや水面が揺れるときのきらめきを表現しています。この技は晩年ほど顕著に使用してます。
『ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日』拡大 図録を撮影
『ウォータールー橋の開通式』はきらめきでできてると言っていいくらい、画面全体に白が散りばめられています。
刃先で塗るだけじゃなく、引っ掻いてハイライトを作る技も使ってます。
『ウォータールー橋の開通式(ホワイトホールの階段、1817年6月18日』拡大 図録を撮影
↑右下の枝のところとか。
ジョン・コンスタブル『コルオートン・ホールのレノルズ記念碑』1833-36年 図録を撮影
↑※この絵は本展に展示されていません。
以前開催されていたロンドン・ナショナル・ギャラリー展@国立西洋美術館(2020年)でのコンスタブル作品の方がわかるかもです。木の枝に沿った細い線のようなハイライト。実物は確かに引っ掻いた跡がありました。
これやった人はあとにも先にもコンスタブルくらいです。
引っ掻きのほうが、非常に線の細いハイライトがつくれます。小枝にできるハイライトは絵の具を置くより、削った方がシャープで質感が出ますね!
戸外で絵の具無しで戦った?
コンスタブルは自然を生に描写しようと外に出て絵を書いた人です。しかも、描いた時間まで記録されているのは今回初めて知り、興味深かったです。
ジョン・コンスタブル『雲の習作』1822年 テート美術館(イギリス)蔵 wikipediaより
この絵は8月27日、風向きは南西から、11時、12時というメモが残されています。一時間で完成させたということです。
印象派も同じく戸外で風景画を描いたのですが、それができたのは持ち運びに便利な絵の具チューブの発明があったからこそでした。
コンスタブルのお父様が持つ広大な土地を活かして、敷地内の製粉所に絵の具を置いて制作したそうです。
この頃、チューブはあったのか?
答えはサクラクレパスのHPにありました。
「コラム」絵具チューブの歴史|SAKURA PRESS|株式会社サクラクレパス
絵の具の容器の歴史を下にまとめます。
〜1828年:豚の膀胱袋
1828年〜:真鍮のシリンジ
1840年〜:ガラスのシリンジ
1841年〜:錫(スズ)の使い捨てチューブ
コンスタブルの晩年は妻の死1828年〜です。その頃は過去の主題を想像も含めてアトリエで描き直し時期になっていました。
つまり、少なくともそれ以前の戸外制作では、シリンジやチューブを使ってなさそうです!
豚の膀胱袋に絵の具を入れて、外に持ち出す。芸術のためには仕方なかったのでしょう!
最後に
コンスタブルの貴重な回顧展、特に 『ウォータールー橋の開通式』を間近に見れたのはすごく良かった!この絵だけでも行く価値はあります!
ターナーの影に隠れがちなコンスタブルですが、後期の作品は派手めで面白いはずですのでぜひ。
それでは!
P.S.
ちょっと記事を作るのに時間かかっちゃいました・・・最近怠けちゃってますね😂これから徐々に腰をあげます。写真も撮らないと。