こんにちは、まるしかです。
ルーベンスはわたしにとって、子供を描かせたら世界一な画家です。
国立西洋美術館が所蔵してるルーベンスの子供の絵が最高なんです!
『眠るふたりの子供』国立西洋美術館蔵 現地にて撮影
髪の毛がクリクリなのと、何と言ってもほっぺたが真っ赤で可愛い・・・。
りんごほっぺ病か?ってくらい赤いんですけど、そこがルーベンスの色の特徴。
ちなみにふたりの視線に秘密があるんですが、それはまた後ほど。
ルーベンスはおそらく、人間の肌に赤色を大胆に置いた世界で最初の画家です。
それまでの画家の描く肌は、黄色かったりピンクがかってたり色々ありますが、全体的に控えめな彩色です。
モナリザとかね。
wikipediaより
自然に見えるけど、血の気は感じられない。
同時代の画家では、今年初めに展示があったベラスケスなんかは、肌に彼のキーカラーであるピンクを生に使ってるところが特徴的ですが、ルーベンスはもっと血を連想させる赤を使って、肌を血色よくしてます。
さらに緑もポイントです。
影に対比色の緑を使うことでより赤を目立たせてます!
ぜひ、絵の中の緑色を探してください。
さて、そのルーベンスは23歳の年から8年間、イタリアで過去の巨匠の作品を研究しました。もともと抜群に絵が達者だったルーベンスは、イタリア時代を経て、ある秘訣を習得します。
そこのところをこの記事では解説していきます。
※この記事は、2018.10.16~2019.1.20に開催された「ルーベンス展ーバロックの誕生(国立西洋美術館)」を訪問して書いた、当時の感想を元に加筆修正しています。
イタリアから学んだこと:動きの表現方法
アゲサンドロス、アテノドロス、ポリュドロス『ラオコーン』制作年不明 バチカン美術館蔵 wikipediaより
あのミケランジェロも影響を受けた古代ギリシアの作品『ラオコーン』。
ラオコーンとその息子2人が、死を目前に苦しむ姿の像です。
ルーベンスもこの像を模写し勉強しています。
ポーズを真似して見てください。すごく苦しい。
左の男の子の首がおかしなことになってるし、ラオコーンの上半身のひねりや、右腕の位置は無理があります。
でも、もがき苦しんでる様子を的確に表してるんですね。
そんなデフォルメをルーベンスは学びました。
学んだことをよく表してる作品がこちら。
『パエトンの墜落』ワシントン・ナショナル・ギャラリー蔵 wikipediaより
wikipediaより
人々の身体がすごいことになってます。
真ん中らへんの女性のポーズが特に。
ちょっと右下の男性は逆さまになってます。
どれもこれも雷の光の線に沿って作られたポーズなんです。
迫力ありますよね。
ルーベンスは主題に古典の物語を好んで選んでいます。
絵に動きが入ることで臨場感を高めています。これが狙いです。
では、狙いの動きを表現するためにどういう技を使ったのでしょうか?
その特徴は2つ挙げられます。
ルーベンスの特徴その1:斜めの線が大好き
画面に斜めの線があると躍動感が出ると言われています。
逆に落ち着きと安定を表す垂直と水平は、ルーベンス作品にはほとんど出てきません。
上の『パエトンの墜落』もそうですし、
『聖アンドレの殉教』。これ絶対バツ型の十字架に興味があって描いたでしょと思っちゃいました^^;
ポニョポニョしてて可愛い天使たちの身体の向きとか、手前で目立ってる男と女の位置や手とか、もろもろ全部斜めを強調する配置になってます。
これも子供の目線が斜めですね。
寝てる姿って、普通静かな感じを出すために水平の線を取り入れがちですが、ルーベンスの描く子供は、コロコロ転がりそうです!
いかにも子供の寝てる姿って感じで、意外にも計算された絵なんです!
ルーベンスの特徴その2:振り向き過ぎ。ギョロ目過ぎ。
『スザンナと長老たち』エルミタージュ美術館蔵 英wikipediaより
基本的にルーベンス作品に出てくる人は振り返ることで感情を表します。
ここでは恐怖。
それと、目の向きでも動きを訴えますね。黒目の位置が極端。
『キリストの埋葬』ボルゲーゼ美術館蔵
キリストを抱えてる女性の黒目もすんごい上向いちゃってます。
この絵もいっぱい隠れた斜めの線がありますね。
『エリクトニオスを発見するケクロプスの娘たち』リヒテンシュタイン侯爵家コレクション 展示会チラシを撮影
ケクロプスの娘たちはアテーナーからエリクトニオスの入った箱を預けられたとき、中を見ることを禁じられたにもかかわらず、箱を開けて見てしまい、エリクトニオスを守っていた蛇か、あるいはアテーナーの怒りにふれて滅びたという。
wikipediaより
ちょっとロゴがあって見づらいですが、下の方に下半身が蛇の子エリクトニオスがいます。上の引用通りの話だと、この後恐ろしいことが起きるんでしょうか?
この絵も女性の体とか斜めの線ばかりだし、真ん中の子供の目は、
上の写真を拡大
真上に飛び出てます。
斜め上の視線というのはあり得るけど、真上を見ることってほぼないのではないでしょうか?
自然なように見えてちょっと違和感のあるところが、絵にインパクトを与えているんだなと考えました。
最後に
- 肌に原色を置いて生命力を表現した。
- イタリア仕込みの大胆なポーズで絵の臨場感を高めた。
- 斜めの線をたくさん取り入れることで、さらにダイナミックに。
このあたりがルーベンス作品の特徴です。
ここまで書いてきた見方でぜひ作品鑑賞してくださいね。
それでは!